! メーカの動作保証外の製品、改造を紹介する記事です。本改造に伴う一切の故障、不利益について、当方はいかなる責任を負いません。ご自身の責任のもと、実施してください。

はじめに

富士フイルムのレンズ付きフィルム 「写ルンです (QuickSnap)」 。良い風合いですよね。
最近では、その写ルンですレンズを各種レンズ交換式カメラに取り付けられるよう改造した製品が販売されています。


写ルンですレンズの何がすごいって、APS-Cセンサではなく、フルサイズセンサの撮像素子をカバーできるのです (一般的なフィルム用のレンズなのだから当然といえば当然)。ならば、愛する世界最軽量フルサイズセンサデジカメ SIGMA fp に装着して遊んでみたい!

しかし、悲しいかな。SIGMA fp のレンズマウント形状である Leica L-Mount では販売されていません。このため、これらの写ルンですレンズを L-Mount アライアンスのカメラに装着するためには、マウントの形を変換するマウントアダプタを間に噛ませなければなりません (例 : Utulens (M-Mount) <- M-Lマウントアダプタ -> SIGMA fp (L-Mount) )。

ですが、マウントアダプタは存外重いもので、せっかくの軽量な SIGMA fp と軽量な写ルンですレンズの相乗効果を殺しかねないです。

また、Utulens は F値 = 16 と、写ルンです本来の F値 = 10 に対して非常に暗いのも欠点ですし、本来の雰囲気から離れてしまいます。Utulensのようにレンズが埋め込まれている形状に対して、レンズを傷つけずにF値を明るくする = 絞りを広げる = 穴を広げる という工作は難易度が高いです。

では、いつもの通り、「無いのなら作ってしまおう」 の精神で臨みましょう。ライカ L-Mount 型 写レンズの工作です。

背景

初めてレンズを工作するということで、いろいろ調べました。まずは、写ルンですの仕様について。他にも、写ルンですレンズを改造している先人の工作方法や、学校で学んだ (はず) のレンズの作図をし直してみたり、F値や被写界深度、許容錯乱円経などの用語を手計算しながら理解を深めてみたりしました。

歴史に敬意を払うと、写ルンですレンズをデジタルカメラと組み合わせる改造を行った開祖は、どうやらおそらく下記の御仁。非常に美しい猫様を捉えています。「写ルンです望遠」 は焦点距離が長いので、改造しやすかったのもあると思います。また、この記事を通してベローズという単語を知りました。確かに昔のカメラでは必ずと言って良いほど見受けられたあの蛇腹。ベローズは今でも使い道がいろいろありそうです。

また、M-Mount であれば、某サイトで自作して販売している御仁もいるようです。シンプルな外見がUtulensよりも格好いいので、マウントアダプタが許容できる方であれば、こちらから調達するのも良いでしょう。(2020年8月29日現在、製造は休止されているようですが)

工作手順

では、工作していきましょう。

まずは、写ルンですの分解とレンズの摘出です。フラッシュ用に電池や電子回路が入っているので感電注意です。

次に、設計について。焦点距離とはざっくり言うと、「レンズの中心から撮像素子までの距離」 です。「写ルンです」 は 32 mm になります。一方、ライカLマウントのフランジバック (撮像素子からマウント部までの距離) は 20 mm です。このため、レンズの厚みも含め、レンズ中心まで 12 mm の嵩を積めればピントが合うようになります。

今回は、SIGMA fp に付属している純正のキャップを、写ルンですレンズのマウントとして利用しました。キャップの厚みは中央部で約 7 mmです。あと 5 mm 。レンズ周りのパーツの厚みを計測すると約 7 mm。つまりキャップかレンズ周りのパーツを合計 2mm 削って薄くすればピントが合うはずです。

ちなみに、こういった細かい工作をこれからしたい方には、マイクロメータを1台持っておくことを強くオススメします。ノギス系の正確さでは、ミツトヨが最高です。

レンズパーツを整えます。写真左側の小さい穴が絞り、つまり F値 = 10 の穴になっています。

そして、キャップに穴を開けます。

穴はレンズの絞りより広くなければなりませんが、開けすぎるとレンズ部との接合が弱くなるのでほどほどのサイズが良いでしょう。今回は約 5 mm で開けました。 なお、最終的に、キャップの厚みにより、5 mm 穴では画面端が陰になってしまうことに気づき、裏側を円錐上に削りました。

レンズ周りの黒いプラパーツを 2 mm 削って合わせてみました。ですが、ピントが全く合いません。むしろ、プラパーツを取り外し、レンズを直にキャップに取り付けた方がピントが合っているように見えました。

こうなってしまっては、地道な現物合わせの世界です。0.5 mm 厚の板を重ねて写真を撮ってピント位置の合う嵩を見つけ出します。結局、さらに 1 mm 削れば良い、つまり焦点距離を 20 + 7 + 4 = 31 mm に変更すれば良いことが分かりました。レンズ裏のパーツを さらに 1 mm 削ると強度に影響が出そうだったため、レンズ裏のパーツとキャップを 0.5 mm ずつ削りました。接着して完成です。接着して完成です。

試行錯誤中の、テープでレンズを直に留めている図です。

完成図

ようやく完成した物がこちらになります。

いかがでしょうか?本当はもっと外観に凝るつもりだったのですが、焦点距離を詰めるのに疲れてしまい、結局、削ったパーツを接着しただけになりました。

一応、この形にも利点があります。チャチな作りですので、どうしてもレンズ裏にホコリが入ってしまう事があるでしょう。また、レンズ自体がプラスチックですから傷が入ってしまう事もあるでしょう。そういった事態に備えて、一番外側のプラパーツを取り外せるようにしてありますので、レンズの洗浄、交換が容易になっています。

作例

とてもエモい画が撮れます。中心部が美しくて周辺がボヤっとしており、まさに写ルンですっぽい画です。せっかく SIGMA fp に装着しているので、映像を撮っても楽しいと思います。なお、現像時に Adobe Lightroom でレンズ補正をかけてますが、色彩にはほとんど手を入れていません。SIGMA fp のカラーモードによる影響が大半です。

終わりに

いかがでしたでしょうか。写ルンですのライカ L-Mount への魔改造は以上となります。

Utulens が約 5,000円なのに対して、今回の工作は調達先にも依りますが、約 1,400円 (写ルンですが約1,000円、純正キャップが約400円) と大変お得です。F値も16から10へと明るくなります。実はこのように自作しておけば好みのF値への調整もしやすいです。焦点距離の現物合わせに時間がかかるものの、工作としてはけっこう簡単な部類でしょう。

1,400円で、エモい f=32(31)mm / F=10 ライカL-Mount レンズが手に入ると思えば、とても魅力的ではないでしょうか?

それでは、みなさんのカメラライフに幸あれ!

工作するなら、ルータも是非お手元に。

余談

8月末、夏休みギリギリの自由工作のつもりで実験をしました。今年はコロナ禍で大変な中、学生さんには夏休みの自由工作の課題は有ったのでしょうか? いずれにせよ、何かに興味を持って、自発的に手を動かすのは良いことだと思います。

そして、3Dプリンタがあれば、こんなに頑張らずとも、格好良いライカ L-Mount 写レンズがさっと作れたはずです。3Dプリンタが欲しいな!